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エネルギーと日本農業の問題を一挙解決! ソーラーシェアリングって?

第1種農地でも、できる!
農水省が認めた新しい農地活用法

ソーラーシェアリングは、営農を前提とした太陽光発電システム。だから、農業に支障が出ないよう、その導入には一定の条件が付けられている。その条件が初めて明確に示されたのが、2013年3月31日付に発せられた農林水産省の通達「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」だ。これはソーラーシェアリングの導入条件を示したものであると同時に、この条件さえ満たせばソーラーシェアリングを行っても良いと農水省が正式に認めたものとして評価される。

具体的には、まず太陽光パネルを支える支柱(架台)の高さ・間隔について、トラクターなどの農業機械を効率的に利用できる空間の確保が求められる。そして重要なのが、ソーラーシェアリングを行うためには、その支柱の基礎部分について農地の「一時転用」をしなければならないということだ。一時転用許可期間は3年で、問題がなければ3年ごとに再許可される。一時転用許可にあたっては、パネル下部の農地における収穫量が、その地域の平均と比較して2割以上減少しないことなどが審査される。

導入件数の推移

用語解説

太陽光パネル(太陽電池モジュール)
太陽の光を電力に変える、発電システムの主役。ソーラーシェアリングでは、作物に 適度な光があたるよう、すき間を空けて設置される。

パワーコンディショナ
太陽光パネルで作られる「直流」の電気を、電力系統(電線)に流せる「交流」に変換する設備。

架台(支柱)
太陽光パネルを支える骨組み。トラクターなどの農業機械が支障なく動けるよう、充分な間隔をあけて立てられる。

COLUMN

ソーラーシェアリングを推進する会 会長
CHO技術研究所代表

長島 彬さん

ソーラーシェアリングは、1人の男の情熱から生まれた。彼の名は長島彬。農業機械メーカーで長年研究開発に携わり、およそ400件もの特許を取ってきた人物だ。定年後に入った慶應大学で、初めて「光飽和点」のことを知った。一定の強さを超えた光は植物の光合成には貢献しないという原理だ。そして、すぐに思った、「太陽の光を植物の光合成と太陽光発電とで分け合う(シェア)ことができるのではないか」と。

2004年に特許を出願し、無償で誰でもこの技術が使えるよう2005年に公開した。2010年には、千葉県市原市にソーラーシェアリングのための土地と家を購入し、本格的な実証研究を開始した。2013年、農林水産省がソーラーシェアリングを認める方針を打ち出した背景には、長島さんの取り組みが大きな意味を持っていたのだ。

今日では、全国1000ヶ所以上にまで普及したソーラーシェアリング。長島さんは、この現状に対し、「ソーラーシェアリングが広まっていくのは良いが、なかには不適切な設備もある。あくまでも営農を重視し、自然災害に強いものでなければならない」と釘をさす。それゆえ、適切な設備としては、「細身の太陽光パネル(35cm程度)、遮光率は35%以内、強風時にはパネルを容易に水平にできる構造」であることを推奨する。

さらに、「ソーラーシェアリングは農業だけのものではない」のだとも。屋上庭園や駐車場、水産業などにも応用できるという。いまや、その意義は海外でも認められ、熱帯地方の飢餓と貧困をなくす技術としても注目を集めている。自然を壊さず、自然と共生する太陽光発電……ソーラーシェアリングには無限の可能性が秘められているようだ。


EARTH JOURNAL vol.05より転載

text: Kiminori Hiromachi

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2018.11.30 発売

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