神戸の“食”戦略がスタート!スローフード国際本部が協力
2016/07/08
足下の自然から立ち上る食文化を発信する「食都神戸2020」。その取り組みをさらに魅力的なものにしていくプロジェクトが始まった。
神戸市は6月23日、記者会見を開き、「食都神戸2020」構想の一環として実施するスローフードインターナショナル(以下SFI)との連携プロジェクトを発表した。
高いオリジナリティを持つ食材や食文化を軸にした地域ブランディング戦略「食都神戸2020」は、2015年4月にスタート。これまでに、神戸市民自身が地元の食を知り、楽しむライフスタイルの定着を図るウェブサイト「EAT LOCAL KOBE」や、年間30回におよぶファーマーズマーケットの開催を展開・計画している。
会見には久元喜造(ひさもときぞう)神戸市長とパオロ・ディ・クローチェ SFI事務局長が出席。詰め掛けた報道陣の前で握手をかわし、ともに「食都神戸2020」における人材育成や海外への情報発信に取り組んでいくことを宣言した。
SFI は、世界160ヶ国に10万人の有料会員を持つ国際組織。自然の生態系と調和した生産方法を守る小規模生産者、土着の食材や食文化の消滅に警鐘を鳴らしつ つ、保護・継承の気運を高めるさまざまなプロジェクトを運営している。地域固有の農水産物や伝統食をデータベース化する「味の方舟プロジェクト」や、絶滅危惧食品を継承者を探し、産業化していく「プレシディア計画」などが代表的。上述したテラ・マッドーレ(国際会議)&サローネ・デル・グスト(展示会)や教育機関「UNISG/食科学大学」も数あるプロジェクトのひとつだ。
▼会見で上映されたスローフードインターナショナル活動紹介動画
パオロ氏は会見で「神戸市はもちろんのこと、日本全体が、豊かな自然環境に恵まれた、世界トップレベルの多様な食文化の宝庫」と日本のポテンシャルの高さに言及。「皆様方の食というものは、非常においしいもの。神戸がサンフランシスコのように食文化の発信基地となり、地域の一次産業者の中から、社会的・経済的にも成功する若者が出てくることを願っています。そのためには、産官学民がきちんと連携し、地元の農家、漁業者、レストラン、ホテル、行政の方々、消費者の方々が連携するようなネットワークをつくることが一番大事です」と強調した。
これに対して神戸市長は、「食都神戸構想に着手したばかりの今、神戸はまだ、世界の名だたる『食都』と肩を並べる存在にはなれていません。スローフード・インターナショナルの考え方や成功メソッド、世界的なネットワークからの情報を取り入れることで、神戸の食都構想を奥行きの深い魅力的なものにしていきます」と語り、会見を結んだ。
連携プログラムの概要は、以下のとおり。
1. スローフードインターナショナル講師によるセミナー
スローフードインターナショナルの講師や神戸市内の食事業者による食育セミナー。対象は、神戸市内の事業者、食を学ぶ大学生、一般市民。2016年8月~11月に計5回開催。
2. ヨーロッパ最大の食の見本市参加による海外への情報発信
2016 年9月22日~26日にイタリア・トリノで開催されるテラ・マッドーレ(国際会議)&サローネ・デル・グスト(展示会)に神戸市の生産者・企業が出展。出展者数160ヶ国より約1,340団体(2014年開催実績)、来場者見込35万人の欧州最大の食の見本市で、神戸の食を発信する。品目は「灘の酒」「有馬山椒」「有馬炭酸せんべい」「いかなごの釘煮」などを予定。
3. 食科学大学と連携した国際人材育成
イタリア食科学大学からインターンを2名受け入れ、日本の発酵文化を学ぶ機会を提供。インターン先は、日本一の酒処である灘五郷の酒造メーカーを予定している。10月~11月を予定。
4. UNISG-食科学大学スプリングスクールの開催
2017年3月に1週間程度の集中講座を予定。アジアからも学生を特待生を招聘し、神戸の地で日本の食等も通 して世界の食事情を学ぶ機会を提供する。
Text:Aya Asakura