領土問題の解決法!?「積極的平和」でピース実現!
2017/03/31
平和学の第一人者で、世界的に「平和学の父」と知られるヨハン・ガルトゥング博士が安倍総理に伝えた、「積極的平和」の概念と平和提言を紹介する。 尖閣諸島、竹島、北方領土の問題についても言及している。
平和学の父、ヨハン・ガルトゥング博士の提言
平和学の第一人者で世界的に「平和学の父」と知られるヨハン・ガルトゥング博士は、世界中の大学で平和学を教えて来られ、これまでに世界100ヶ所以上の紛争調停をしてきた、平和実現のプロフェッショナルです。
「積極的平和」とは何か
まず「積極的平和」とは何か。ガルトゥング博士は「平和」を健康にたとえます。
「平和というものが健康と非常に近いです。「消極的な健康」に対し「積極的な健康」という考え方です。
同じように平和も「消極的な平和」、そして「積極的な平和」というように考えられます。」
「平和学においては、軍事的抑止によって平和が保たれている状態は「消極的平和」です。
たんに戦争がない状態であっても紛争の種がくすぶっていたり、緊張がある状態はまだ「消極的な平和」で、「積極的平和」とは、すべての紛争の種がなくなり、貧困、抑圧、差別などの「構造的暴力」がない状態のことをいいます」とガルトゥング博士。
たとえば、安倍内閣は「積極的平和主義」のために抑止力強化や日米同盟等の強化をするとして、安保法もその方針に基づいて集団的自衛権を盛り込みました。
これは平和学の定義でいえば「消極的平和」です。
平和学の「積極的平和」(Positive Peace)と安倍政権の「積極的平和主義」(Proactive Contribution to Peace)は英語では異なります。
しかし日本語の表記が同じなので誤解を招いていることは否めません。
ガルトゥング博士は「安倍首相は『積極的平和』という言葉を盗用し、私が意図した本来の意味とは正反対のことをしようとしている」と沖縄での講演で警告しました。
尖閣諸島、竹島、
北方領土の問題
そのうえでガルトゥング博士は、尖閣諸島、竹島、北方領土など、日本がかかえる領土問題にも触れました。
「平和学の考えだと、これらの解決方法としてジョイントオーナーシップ(Joint Ownership)=共同所有を提言します。
主権を主張して争うのでなく、双方が主権をいったん放棄して「特別区」として共同管理するというのです。
この方法で成功しているのがペルーとエクアドル。
この二国はアンデスの山の領土権で長いこと紛争していました。
エクアドルもペルーも、自分のものだと主張してきて、戦争は54年続きました。
何度も停戦協定があって、それは破られてきました。
でも共同管理とすることで、今では戦争したことすら忘れられているのです」。
ガルトゥング博士の仲介で、ペルーとエクアドルは、領土問題の地域を共同で管理する自然保護の国立公園としました。
同じように尖閣諸島、竹島の問題も解決できるはずだと言うのです。
「どうやって武力衝突にならないかを考えるなら、両者が主権を主張するのではなく、共同管理が必要です。
そこで生まれる利益については、40%をそれぞれ日中に分配し、残り20%を漁業の資源保存に使うということなどがいいでしょう。
同じように竹島の問題も、領有権は韓国と日本のどちらかということではなく、共同で管理するのです」。
「北方領土も大変難しい問題ですが、これも共同管理が望ましいです。
それは日本の主権を主張して取り戻すということではなく、ロシアも主権を主張するのではなく、共同で所有するということです。
ロシアは二島返還を示唆していますが、そうすると日本には二島の主権がありますが、二島の主権はロシアに残ります。そのうえで共同開発ということを言っていますが、それではいけません。
主権は放棄したうえでの共同開発が必要です。
コンフリクトの解決の方法は、共同で同じ条件で管理することが大切なのです。
また北方領土は、アイヌのひとたちが長く住んでいたという歴史があります。
一島はアイヌのひとたちに返還するということも良いかもしれません。
それは、日本の歴史にとっても大切なことです」。
谷崎テトラ
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。世界のエコビレッジや聖地を旅し、収録した音源で音楽作品も数多く制作している。
http://www.kanatamusic.com/tetra/
※『SOLAR JOURNAL』vol.15より転載