食・農活

伝統的な作り方に回帰した天然酵母パンの秘密とは?

いま各地で天然酵母パンが流行している。食の文化における里山資本は「発酵文化」であると考える谷崎テトラさん。その考えとは?

2016年の夏よりNHK広島が制作しベストセラーになった「里山資本主義」のチームといっしょに「里山カフェ」という番組をつくることになりました。JALの機内で流れる番組で、たんなる旅番組ではなく、里山の資本を活用したひとと暮らしを訪ねる番組です。全国のおいしい田舎を取材できるということで、最初に訪れたのが「里山資本主義」がうまれた場所、広島。その里山、世羅町にある古民家をいかした『おへそカ フェ』を訪れました。

いま日本各地で天然酵母パンのパン工房が増えてきています。全国でパンのイベントがおこなわれ、東京のファーマーズマーケットでおこなわれている最大級の「パン祭り」は2万人を動員しています。火付け役の話題のパン本 『CRAFTBAKERIES』(メディアサーフコミュニケーション刊)では、全国でパンにこだわるパン職人 (クラフトベーカリー)の61店が紹介されています。

『おへそカフェ』はその本でも紹介されている広島県世羅町の谷あいにあるカフェ&ベーカリーです。パンの酵母は、玄麦と水だけで自然発酵させる最も原始的な製法。市販の酵母はいっさい使っていません。パン工房隣の耕作放棄地を再生させて育てた自家産無農薬玄麦だけを使い、挽きたての新鮮な粉と湧き水で酵母を醸しています。パン生地の基本材料は粉・塩・水のみで、最低24時間以上かけてじっくり発酵させます。

そうしてできた天然酵母のパンは、わざわざ他県から買いにくるひともいるほど。『おへそカフェ』はもともと東京・丸の内で国際会計士だった京子さんと、スペインでバリバリ働いていたデザイナーのフランクさんが、都会生活に疲れ、休暇を過ごしたイタリアのグリーンツーリズムの農家で恋に落ちたところから始まりました。二人は結婚し、京子さんの故郷、世羅の古民家で、地元食材・バレンシア仕様のカフェを開きました。

おへそカフェの京子さんとフランクさん。

精製・漂白・ドライイーストなどの現代の一般的なパンづくりがひろがるなかで、ヨーロッパでも本来のパン作りが忘れられてきています。そんななかで「伝統的なパン作りに回帰しよう」「Real Bread Campaign(本物のパン運動)」という機運がオーストラリアやヨーロッパで広がっています。おへそカフェもこの動きに共感し、アジアで初めて「Artisan Bakery Association(伝統パン職人協会、本部オーストラリア)」に加盟したそうです。パンはもともと、発酵食品です。じっくり時間をかけてつくるスローフードです。こうして作られた「伝統的なパン」には、味噌やチーズと同じように酵素やアミノ酸、ビタミンなど天然の有用成分が豊富に含まれています。

食の分野においての「里山資本」はなんといっても「酵母菌」そして「発酵文化」ではないでしょうか。以上、広島県世羅町からのレポートでした。


おへそカフェ
広島県世羅郡世羅町宇津戸1155
Mail: info@ohesocafe.com
0847-23-0678(受付時間:水木をのぞく9:00~17:00)
公式HP


谷崎テトラ
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。世界のエコビレッジや聖地を旅し、収録した音源で音楽作品も数多く制作している。
<谷崎テトラホームページ>

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2017年9月30日発行

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