日本に根付く天然資源「稲わら」の活用法とは?
2016/12/15
フリーアナウンサーでありながら農業ジャーナリストである小谷あゆみによる連載コラム「地球を耕そう! おひとりさまの農ライフ」。日本人が古くから行っていた稲わらの活用法とは。
日本に根づいた
稲わらの活用法
地球に暮らすすべてのみなさま、こんにちは。野菜をつくるアナウンサー・ベジアナです。生まれて初めて「蓑」を背負いました。みのですよ、みの! ワラで編んだマント! 写真や漫画で見たことはありましたが本物は初めて。ショルダー部分はきれいに編み込んであり、背中はあったか。雨や雪除け、日除け、防寒にもなり、戦前までは全国の農村で見られました。日本人はお米を収穫した後の稲わらを大切に再生させて暮らしに役立ててきたんですね。わらの活用といえば他にも、わらじ、しめ縄、わら人形〜。それからこんな歌を思い出しました。「わ〜ら〜にまみれてよ〜、育てた栗毛〜♪」
三橋美智也さんの「達者でナ」。昭和35年の歌だそうで、牛や馬の飼料や敷料として使われていたんですね。糞と一緒に発酵させて田畑にまけば、上質な堆肥になります。耕種農家(米や野菜)と畜産農家の連携は「耕畜連携」と呼ばれ、資源循環型、環境保全型のエコ農法として国でも推進しています。
私が初めて稲わらの活用を知ったのは、野菜畑の敷きわらとしてでした。雑草よけ、土の乾燥予防、泥はねの予防になるマルチカバー。天然素材でいずれは土に帰るのですから一石何鳥か数えきれません。風情もありますから、家庭菜園にこそ稲わらを使いたいですね。
先日、大阪の万博記念公園にある「国立民族学博物館」へ行ってきました。世界中の民族の文化や生活道具が一堂に会する中、民族学から見た日本の展示は、「稲作文化と稲わら細工」がメインでした。
壁一面の「しめ縄飾り」は実に多様で、新潟、富山から、神奈川、静岡、香川、愛媛まで地域ごとに独自性があり、日本という国は西から東まで、お米を作り、稲わらでしめ縄を編んで恵みを祝い、また祈ってきた民族であると思わずにはいられませんでした。
全国から集められたしめ縄飾り(国立民族学博物館)
わたしのふるさと高知県黒潮町には、一本釣りのカツオを、稲わらをくべた炎で一気にぶわーっと炙る「わら焼き」があります。漁師の伝統料理「かつおのたたき」に、稲わらは欠かせないのです。ごはんと鰹節。和食の基本でもありますね。また1300年前、奈良・平城京に塩カツオを献上してきた西伊豆町にある「カネサ鰹節商店」で見たカツオのお飾りは、稲わらとカツオの見事なアートでした。これぞ半農半漁の連携コラボレーションです。
西伊豆町「カネサ鰹節商店」で発見したカツオのお飾り。ここまでくると、まさにアートです!
焼いてしまうと煙となる稲わらですが、昔から日本に根づいた貴重な天然資源です。青森、会津若松市、新潟などでは地域ぐるみで稲わらの活用を推進しています。米づくりとは、お米を食料として、稲わらを暮らしに活かして循環することなんですね。
地球も喜ぶライスなアイデア!みなさんも見つけたら教えてくださいね。
小谷あゆみ
フリーアナウンサー/農業ジャーナリスト。石川テレビ放送を経てフリーに。野菜をつくる「ベジアナ」として農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。農業・農村、介護・福祉、地方創生をテーマに取材、講演活動。NHKEテレ「ハートネットTV・介護百人一首」出演中。農林水産省 食料・農業・農村政策審議会畜産部会及び農業農村振興整備部会臨時委員。ブログ「ベジアナあゆ☆の野菜畑チャンネル」公開中。