この夏は、農的暮らしを宮城県石巻市で体験しよう!
2017/07/04
「田舎暮らしをしたい」と思いつつも現実的にかなわないという人は、少なくない。それならマルチハビテーション(多拠点生活)という選択はどうだろう? 近年、農的暮らしを体験できるサードプレイスが全国的に増えている。今回は、宮城県石巻市にオープンした「モリウミアス アネックス」を紹介。
自然の循環を学び、
子供たちの未来を考える場所。
深緑の山々と豊穣な海に囲まれた、宮城県石巻市にある旧雄勝町。この町で2015年7月にオープンしたのが、子供の複合体験宿泊施設「モリウミアス」だ。
2002年に廃校となった築94年の小学校を、約5000人以上ものボランティアが修復、改装。地域交流をしながら自然の循環を体験できる、サステナブルな学び舎として生まれ変わった。
以来、子供たちの笑顔があふれるこの場所は、東日本大震災の深刻な被害を受け、今も復興の途中にある雄勝町において、希望の象徴になりつつある。
さて、そんなモリウミアスの一角に、今年の1月、新たな施設がオープンした。大人のための協働宿泊施設「モリウミアス アネックス」だ。大人を対象としたプログラムを立ち上げた理由について、代表の油井元太郎さんはこう語る。
「子供たちにとって『サステナブルに生きること』を学ぶ機会は大切です。ただ現代社会では、大人のほうこそ、そういうところからほど遠い生活を送っているケースが多いのが現実です。そうした人たちにも自然の循環を感じながら、それぞれの『社会課題』を感じて持ち帰るための場を提供できたらと考えたんです」。
モリウミアス アネックスは、パーマカルチャーの考えに基づいたサステナブルな仕組みを取り入れた斬新な宿泊施設だ。ウッドボイラーや太陽熱温水器といった自然エネルギーを採用し、そこで得た熱を給湯や床暖房に活用。また、居住性を追求し、寝室には、オーガニックコットンとリネンの寝具を完備。自炊可能なキッチンや、Wi-Fiやプリンターを完備したスタジオなど、長期滞在がしやすいような工夫が随所に凝らされているのも特長だ。
素泊まりで自炊するのもいいが、宿泊費に4千円をプラスして1日3食付きにするというプランもオススメ。野菜や米、魚介類、ジビエなど、雄勝産の新鮮な食材をふんだんに使った、四季折々の料理はまさに絶品。また、食事でサステナビリティを体感できるという点もここでの醍醐味の1つ。モリウミアスでは、余った食物をブタなどの家畜に餌として与え、その家畜の糞尿を堆肥にして畑にまいている。そうやって大事に育てて、収穫した野菜が食卓にも上るというわけだ。
食べる、暮らす、寝る。そうした基本の生活を体験するだけでも、サステナビリティを実感することができるモリウミアス アネックス。滞在するだけで十分価値があるものの、より豊かな時間を過ごしたいのなら、ぜひ滞在オプションとしてワークショップに参加したい。
たとえば、地元漁師のレクチャーによる漁業体験、語り部による震災の話会といった地域交流のほか、近くの畑での農作業、家畜の世話、パーマカルチャーの管理補助などなど。多彩なワークショップを、今後はより充実させていく予定だという。
すべてに共通するのは、「子供の学び場を一緒に進化させてゆく」ためのプログラムだということ。体験を通してそれぞれの思考を深めていってもらえたら、というのが、油井さんの願いだ。
「微生物の力で生活排水をきれいにしてその水でお米を作ったり、裏山で切ってきた薪を焚いてお風呂を沸かしたり、残飯を家畜に食べてもらってその糞尿を堆肥にしたり。ここにいれば、『生きる』ということが体感できると思います。
今や、昔ながらの暮らしこそ、最先端の暮らしだと思っていて。自然の中でも環境を壊さない仕組みさえ作れば、自然も人ももっと豊かになるということを、ここでの暮らしやワークショップを通じて、多くの人に知ってもらいたい。
今後、気候変動や資源の問題などで、自然とともに生きることがますます重要課題になっていきます。問題が山積みだからこそ、社会人の方々に来ていただいて色々と感じてもらうことが大切です。気軽に来てもらって、ここを第2の故郷のように感じてくれる人が増えていったら嬉しい。人材育成にもつながると思いますし、個人はもちろん、企業や団体さんにもぜひ利用していただきたいですね」。
DATA
MORIUMIUS annex(モリウミアス アネックス)
宮城県石巻市雄勝町桑浜字桑浜60
HP:モリウミアス アネックス
1部屋1泊(最大4名まで):24,000円
グループルーム(相部屋)1名1泊:7,000円
平日滞在(3泊以上)学生 1名1泊:5,000円
食事3食(朝・昼・晩) 1名:4,000円
自炊材料付き※:2,000円
プログラム参加費 1名:3,000円
石巻イオン-モリウミアス間送迎:2,000円
※地元のものを中心とした食材の手配が可能。食材を持ち込んでの自炊も可。
photo&text: Yukiko Soda
EARTH JOURNAL vol.04(2017年春号)より転載