木質バイオマスでつくる、循環する地域社会
2016/07/07
「地域循環型エネルギー産業」として注目を集めるバイオマス。その利活用と地域活性について、木質バイオマスの取り組みが進む群馬県上野村の役場振興課の佐藤伸氏による講演の内容をレポートする。
森林が村面積の95%を占める村
2016年6月15日(水)〜17日(金)に東京ビックサイトで開催された“次世代エネルギーと新しいまちづくり”がテーマの展示「スマートコミュニティ Japan2016」。その中での特別講演会「バイオマスエキスポフォーラム」において、「林業の再生と森林資源の活用を目指して」と題し、群馬県上野村役場振興課の佐藤伸氏が、林業の再生と森林資源を活かす村の取り組みについて紹介した。
群馬県上野村は平成28年4月現在、人口が1300人と群馬県で最も人口が少ない自治体だ。昭和30年の人口5000人をピークに減る一方だが、ここ数年Iターン移住者が多く人口の18%も占めており、減り方は緩やかになっているという。また、村面積の95%を森林が占めているため、古くから林業や木工関係が地域産業となっていた。
地域コミュニティー持続のために木を活用
しかし、日本全体で林業を取り巻く環境は厳しさを増しており、上野村も地域コミュニティ持続が難しくなっていた。そこで現村長が「森林所有者にお金を返せるようにしたい」と、村で平成22年度から搬出間伐に対して補助金などの支援をし、低質の材に関しても森林資源として有効活用できるように、木質ペレット工場を建設。製造された木質ペレットは、村内の温泉施設「しおじの湯」や村営の単身用集合住宅に導入した木質ペレットボイラーのほか、公共施設などに設置したペレットストーブで使用されている。
森林資源確保のための25年の長期素材生産計画
木材の利用が増えたことから、上野村では作業道を整備し、木材の生産量を増やすことに。しかし、いくら村のほとんど森林が占めているからといって闇雲に伐採していては先細りが目に見えている。そこで、今後も森林資源を無駄なく末長く利用していく上で重要なのが、持続可能な循環を確立することだ。上野村では5年単位で25年の長期素材生産計画を立てることで、今後も森林資源を継続させていくべく、林班単位での森林経営計画を立てているという。上野村の森林面積の4割を国有林が占めているが今年からその国有林も事業化することになった。
バイオマス関連施設で村内の経済を循環させる
上野村では、昨年度から木質ペレットをガス化して行う木質バイオマス発電施設の稼働を開始するなど、森林資源の活用とエネルギーの地産地消を進めている。木質ペレットによる熱電併給装置の木質バイオマス発電は国内初で、発電施設は自分たちで資源を賄えるだけのサイズにしているのが特長だ。昨年度の稼働率は60〜70%で、総発電量は約100万kWh。出力された電気と熱は、上野村役場が産業振興と雇用促進のために設立し、現在55人が働く「(株)上野村きのこセンター」で利用しており、電気代を前年比で13%(約400万円)削減することに成功した。
今後は村に多い広葉樹の活用法を模索するほか、システムのブラッシュアップや従事者の処遇向上、ペレットの生産品質の確保、発電の安定化を目指し、さらなる地域産業の活性化に取り組んでいくという。
Text:Akiko Okawa