電力自由化の基礎知識① 電力自由化の概要
2016/04/01
2016年4月の制度改正で話題の「電力自由化」について、わかりやすくお伝えする短期集中連載。まずは、“電力自由化”について。
東日本大震災がきっかけに
電気事業は3つの工程に分かれます。1つ目は電気を作る「発電」。発電所を建設して電気を作る仕事です。2つ目は電気を送る「送電」。作られた電気を使用される場所まで運ぶ送電線を保有・運用しています。3つ目は電気を最終的に需要家(消費者)に届ける「小売り」です。
今年4月に実施される電力自由化は、このうちの小売り部門を自由化するものです。これまでは東京電力や関西電力といった既存の電力会社からしか電気を買えなかった一般家庭も、購入する電力会社を選べるようになります。工場や一定規模以上の商店はこれまでも選択することが可能だったので、全面自由化といった方がより正確ではあります。
小売り全面自由化を実施する大きなきっかけになったのは、2011年の東日本大震災でした。福島第一原子力発電所の爆発事故と、その後の東京電力エリアでの計画停電の実施が人々の電気事業への関心を高めました。それまでの電力供給構造の欠陥が露わになったこともあり、政府は全面自由化を柱とする電力システム改革に乗り出したのです。
掛け声倒れで終わる可能性も?
全面自由化の実施は、震災前の2008年にも実は一度検討されたことがあります。新規参入した事業者のシェアが伸びず家庭まで営業先を拡大する余力がなかったため、その際には見送られました。そう考えれば、新規参入の事業者が力をつけなければ、制度上全面自由化をしても、それが掛け声倒れに終わる可能性は、今回もゼロではありません。
そこで重要なのは発電部門の自由化です。発電部門には入札制度が導入されるなど部分的に競争原理が導入されていますが、競争力のある大型の発電所のほとんどを既存の電力会社が囲い込んでいるのが実情です。そこで政府は発電市場の流動性を高めるための施策も講じています。その成否が小売り全面自由化の動向にも大きな影響を与えるでしょう。
三部門のうち、送電部門だけは今後も地域独占が認められます。送電網は既に全国に張り巡らされており、新規参入の事業者が別に整備するのは無駄だからです。送電線の使用料金は政府の認可対象になります。
文/木舟辰平
※『EARTH JOURNAL』vol.01 より転載