電力自由化の基礎知識② 全面自由化で何が変わるか
2016/04/02
2016年4月の制度改正で話題の「電力自由化」について、わかりやすくお伝えする短期集中連載。2回目は、電力自由化で“変わること”について。
異業種からも続々と参入
全面自由化を機に、多くの企業が家庭向けの電力小売りに乗り出します。その代表的な業種は電気以外のエネルギー会社です。東京ガス、大阪ガスなどの都市ガス会社、JXエネルギー、昭和シェル石油などの石油会社、アストモスエネルギーなどのLPガス会社が着々と準備を進めています。
また、これまで電気事業に関わりがなかった事業者も続々と参入します。例えば、ソフトバンク、KDDIといった携帯電話会社、コンビニエンスストアのローソン、ケーブルテレビ大手のJコム、関東の大手私鉄である東京急行などが名乗りを上げています。
これら事業者は電力販売が主力事業の強化につながると考えています。自社の商品と電気を組み合わせることで顧客の満足度を高める狙いです。ガス会社ならガスとのセット割引、石油会社ならガソリン代や灯油代のキャッシュバックをアピールしています。独自のポイントサービスを立ち上げたり、すでに流通している有力ポイントを電気料金に応じて付与したりする会社も出ています。
迎え撃つ側の既存の電力会社も手をこまねいているわけではありません。顧客離脱を最小限に抑えようとさまざまなアイディアを出しています。例えば、中国電力は地元の人気球団「広島カープ」と提携し、カープが勝てばポイントが貯まるサービスを始めます。
どの会社を選んでも
停電の頻度は一緒
新規参入の事業者に切り替えても停電の頻度が増えることはありません。前述のように、送電部門は今後も地域独占が許されます。つまり、どの小売り会社から電気を買おうとも電気は共通の送電線を通って送られてくるので、小売り会社によって電気の質に違いは生まれないのです。
小売り会社を切り替える手続きも難しくありません。新しく契約を結ぶ会社に連絡すれば、必要な作業はその会社が全て行ってくれます。これまで契約していた電力会社に解約の連絡をする必要はありません。30分単位で電気の使用量を計測できるスマートメーターを取り付けなければいけませんが、その費用を負担する必要もありません。
文/木舟辰平
※『EARTH JOURNAL』vol.01 より転載