社会・環境

発電所完成まで丸7年。再エネで「エコなまちづくり」

和歌山県中央部に位置する有田川町は近年、名産の「有田みかん」や棚田百選で知られる「あらぎ島」だけでなく、「エコなまちづくり」で注目を集めている。2回目となる今回は、そんなまちづくりを主導する行政サイドの「ひと」の話。

有田川町が取り組む
再生可能エネルギー事業

有田川町営二川小水力発電所

平成18年に吉備町、金屋町、清水町の3町が合併して誕生した有田川町。旧吉備町で進められていたゴミ集積場のステーション化を合併後も推進、町内の資源ゴミ運搬処理業務を黒字化したことを契機に、平成21年度には現在まで続く「有田川エコプロジェクト」を始動した(詳細は第1回記事参照)。
この「廃棄物のリサイクル事業」と併せて同プロジェクトの柱となっているのが「再生可能エネルギー事業」で、平成28年2月に完成した「町営二川小水力発電所」は、その象徴的な存在。

自然豊かな有田川町山間部、旧清水町にある二川ダムは、昭和28年にこの地域に起こった大規模な水害を契機に計画され、昭和42年に完成したもの。ところが、ダムの下流域は6~7キロ下流へ下らないと支流がないため、水をせき止めたままだと夏場に水が腐り、「生物が死んだり、悪臭がする」と住民からの苦情が寄せられ、平成10年に放水用の穴(維持放流設備)が設けられた。この放流水の持つエネルギーに密かに着目していたのが、当時旧金屋町の教育委員会に務めていた中岡浩さんだった。

有田川町建設環境部で環境衛生課長を勤める中岡浩さん。「この町で、先輩達が取り組んできた環境行政を受け継いで、さらに進めていければと思います」。

難航する交渉を乗り越え、
二川小水力発電所を完成

「ダムの上から放水を見るたびに、これだけの水量と落差があれば、充分発電に利用できるはずだと思っていました。そこで3町合併後に提案して見ようと思い立ったんです。はじめのうちは取り上げられませんでしたが、3年後の平成21年当初に「有田川エコプロジェクト」として企画案を提出し、面白そうだからやってみろ、と町長の了解を取り付けました。新たに環境課新エネルギー推進係長という役職について、水利権の交渉から始めたわけです」。

ところが、二川ダムは治水と発電の役割を持つ多目的ダム。その維持放流水の再活用など前例がなかったため、交渉は難航をきわめたという。

「県に交渉に行っても、初めは取り合ってもらえませんでした。やっと交渉に入れたと思ったら、費用負担の問題で壁にぶち当たったんです」。

そもそも維持放流水は毎秒0.7tの定量で放水されているが、それを全量発電に利用するため、提示された費用負担比率は50%。維持放流設備の建設にかかった費用が約14億円で、減価償却分を差し引いても7億5千万あまり残っていたため、その半分を先に支払う必要があるというのだ。しかも加えてダム本体や管理棟、水位観測所、放流設備などの効用分(利用効果分)も支払わなければならない。

「ある程度は覚悟していたものの、こんなに大変だとは思っていませんでした。発電所にはイニシャルコストだけでなく、ランニングコストもかかってきますから、なんとか負担割合を引き下げてもらえないかという交渉になりました。結局、申請前の事前交渉だけで4年、完成までには丸7年かかってしまいましたね」。

長期にわたる交渉に焦りを感じながらも、前述の「廃棄物リサイクル事業」などへの取組みを着実に拡げながら、ついに完成に漕ぎ着けた町営二川小水力発電所。総事業費は、調査費、設計費、分担金など含め2億8600万で、うち工事費は2億5000万。稼動後には発電した電気を売ることで得た資金を、「有田川エコプロジェクト」の原資として活用していく。

発電所に設置されたフランシス水車と発電機。当発電所は水質も良好で、通常時のメンテナンスもそれほどおおきな負担にはならないという。

二川ダムの維持放流水を活用した二川小水力発電所。左が発電時、右が通常放流時の様子。勢いが減っている分、そのエネルギーが電気に変換されているという証。

「この発電所の年間発電量は年間約120万kwhで、4千数百万の売り上げが見込めますから、償却期間を20年とすると、年間2千500万円以上の純利益が得られる予定なんです。それをさらなる町の再エネ推進や教育に役立てていければと思っています」。

実は有田川町一帯には、「地元に電気を灯そう」という地元住民の熱い想いで古い時代に建設的された水力発電所が5ヶ所ほどあり、うち1ヶ所は現在も稼働中とのこと。そういう土地柄だからこそ、今後は規模こそ小さくても、「民間主導」によるこうした小水力発電所の可能性もおおいに感じられる。

「循環型社会の実現に向けた取り組みとして、住民の方々に少しでも関心を持っていただき、エネルギーを使う意識を変えていければ。この発電所をきっかけに民間の取組みが増えて、それを行政としてバックアップできればと思っています」。

次回は、そんな有田川町の住民によるエコなまちづくりについて紹介する。

今回紹介した町営二川小水力発電所の取組みが取組みが評価され、平成28年度「新エネ大賞」の資源エネルギー庁長官賞を受賞(写真は表彰式の様子。一番右が有田川町環境衛生課主事の上野山さん)。さらには未来のあるべき社会像として描く「プラチナ社会」のモデルとして体現している全国各地の取組みを表彰する「第5回プラチナ大賞」でも、審査員特別賞を受賞した。

前記事:地球にも財政にも優しい!「エコなまちづくり」って?

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