半農半X――加藤登紀子とYaeの生き方
2014/12/26
目の前の土を耕し安心して生きよう
また、Yaeさんも、土との関わりについて話してくれた。
「現在、鴨川自然王国代表理事を勤める藤本博正は私の夫なのですが、その藤本が以前こんな事を言いました。『野菜は人間がつくるんじゃない。野菜をつくるのは土であり地球なんだ』と。その通りだと思いました。私たちのできることといえば、ちょっぴり土のお手伝いをすることくらい。でも、そうやって土を耕すことは、私たちの命を繋ぐことでもあるんです」。
土を耕せば耕すほど、大地の恵みを感じれば感じるほど、自然の力の偉大さを感じる、と話すYaeさん。
「人間がいくら手をかけて、一生懸命に耕したとしても、いつもうまくいくわけではないですよね。でも、だからこそそこからメッセージが感じられるんです。作物の生産状況がこれくらいだから、虫たちはあまり食べないようにしているんだな、とか。みんなで生きている。誰かが欲張り過ぎちゃいけないって、わかるんですよね」。
そんなYaeさんの言葉を、うなずきながら聞いている登紀子さん。自然の中でバランスしていく命の輪、自然が時間をかけて育む命へと、自身の想いを馳せている様子。
「あんなに小さかったYaeも大人になって、今では赤ちゃんを抱いています。長い時間をかけて、いつの間にか繋がって行く命を感じずにはいられませんよね。それを見ていると安心して今日を生きようって思います。今しっかりと耕せる土地で、汗を流して土を耕せばいいんだって思うんです」。
加藤登紀子
1965年東京大学在学中、第2回日本アマチュアシャンソンコンクールに優勝し歌手デビュー。以後、「ひとり寝の子守唄」(1969年)、「知床旅情」(1971年)などを筆頭に、ヒット曲多数。アルバムは、実に70枚以上をリリース。魂を震わせる愛の歌は、世代を超えて多くのファンを酔わせる。また、地球環境問題にも積極的に取り組む。
Yae
本名:藤本八恵。東京生まれ。故藤本敏夫、歌手加藤登紀子の次女。1995年、音楽劇『コルチャック先生』で女優デビュー、1999年頃より歌手およびシンガーソングライターとして活動開始。2009年より拠点を父・敏夫が創設した『鴨川自然王国』へと移し、半農半歌手としてユニークな活動を続ける。
※『SOLAR JOURNAL』vol.10より転載
撮影/都築大輔 取材・文/井上晶夫