社会・環境

サステナブル建築探訪 自然回帰するアーキテクチャ

建築家、フリーデンスライヒ フンデルトヴァッサー。 持続可能な社会の夢を描いた建築家たち…… その想いは美しい建造物として具現化され、僕らの花鳥風月という心を魅了する。

人と自然の調和を願った ウィーンの建築家のヒストリー

フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーは、1928年ウィーン生まれの画家だ。幼い頃、「森で摘んだ花の色をきれいなまま残したい」と絵を描き始めた少年は、第二次世界大戦後、画家を志して旅に出た。北アフリカの大地で目にした赤土の家に、自然とともにある生への憧憬をかき立てられた彼はその後、建物と水と木を主題に多くの作品を描く。「自然の中に唯一存在しないものが直線である。社会や文化が直線に基づいているとすれば、やがてすべては崩壊するだろう」という言葉に象徴される世界観はある日、建築へと昇華する。人と植物の共生について熱心に語る彼をテレビで見た当時のウィーン市長が、市営住宅のデザインを依頼したのだ。こうして、直線がなく水と緑と調和したユニークな集合住宅がウィーンの街中に顕現。以来、多くの直線を持たない建築デザインを手がけた。その作品群は、2000年に没した今もなお、多くの人に自然との調和を訴えかけている。

“自然の中に唯一存在しないものが直線である”

①フンデルトヴァッサー・ハウス (オーストリア/ウィーン)

ej_arc20161108_01

屋根やベランダに緑を植えて建物を覆い、都市における自然共生を実現。その自由な発想は、建築家ペーター・ペリカンの協力を得てかたちになった。今も市営住宅として活用され、ピロティに据えられた噴水は住む人々の憩いの場となっている。1985年竣工。
②ヴァルトシュピラーレ(ドイツ/ダルムシュタット)

ej_arc20161108_04

ドイツのダルムシュタットにある12階建て全105戸の集合住宅。「森の渦巻き」を意味する「ヴァルトシュピラーレ」の名の通り、渦巻き状に徐々にフロアが増えていく。屋根は緑に覆われ、中庭には池。建物と木と水を主題にした彼自身の絵画から抜け出てきたようだ。1000以上ある窓は、ひとつとして同じ形のものはない。2000年竣工。
③舞州スラッジセンター
(日本/大阪)
ej_arc20161108_03
2004年に完成した汚泥処理・再利用施設。フンデルトヴァッサーは、日本とゆかりの深い芸術家で、1960年代には日本で木版画を制作したほか、フンデルト(100の意味)ヴァッサー(水の意味)を「百水」と漢字にしてサインに使っていた。


Text: AYA ASAKURA

『SOLAR JOURNAL』 vol.15より転載

関連記事

2015/10/21 | エネ活・最新技術

インパクト大なソーラーハウス登場

2000/08/19 | 編集部からのお知らせ

10万円以下で始める「農業クラウドサービス」

アクセスランキング

  1. 初めての家庭菜園、ミントを育ててモヒートを作ろう
  2. 2050年は江戸時代?未来に生きるための農業の在り方。
  3. 自然の恵みを感じよう! 森の中で楽しく暮らすコツ
  4. 全米が注目!最新農業都市モデル「アグリフッド」
  5. 憧れの田舎暮らし! 移住体験ができる人気宿7選!
  6. 陸上養殖の搬送に最適! 「圧力用高密度ポリエチレン管」の強みとは?
  7. 領土問題の解決法!?「積極的平和」でピース実現!
  8. 100人いれば100通りの意味「アグロエコロジー」って?
  9. “社会と教育”を鋭い切り口で語る! 第1回『SDGs LIVE』イベントレポート...
  10. ベランダでできるエディブルガーデンのはじめ方
SDGsTV 緑のgoo

雑誌

「EARTH JOURNAL」

vol.06 / ¥1000
2018.11.30 発売

お詫びと訂正