市民と電気のチカラで農地が美しくなる!
2016/03/07
エネルギーも地産地消が求められる時代。そのカギを握るのは「市民の力」だ。震災以降、地域でつくる地域のための電気「ご当地エネルギー」が徐々に増えている。
農地を農地として残すための
エネルギー利用
農地の上に太陽光パネルを並べて発電する「ソーラーシェアリング」は、土地を有効利用して、農家が農作物だけでなく売電という副収入も得られる方法として広まってきた。法律が改正され農地で施工しやすくなった2013年からは本格的に増加、現在は100ヶ所程で実践されている。
一般にメガソーラーなど大規模な太陽光発電所を設置しても、収益は設置企業のものになるので、地域へのメリットはあまりない場合が多い。一方、このソーラーシェアリングは設備こそ小規模だが、農家が売電収入を得ることで地域の農業が持続可能になり、農地が農地として守られるという意義に結びつく。
よく知られるように現在日本の農業は、農家の後継ぎ不足や農業従事者の高齢化、そして耕作放棄地の増加など数々の問題を抱えている。しかし、売電収入を加えれば営農していけるとわかれば、再び農業を手がけようという人も増加するはずだ。
新しいアイデアによってその可能性はさらに広がる。例えば、福島県南相馬市でソーラーシェアリングを実施している一般社団法人えこえね南相馬研究機構(えこえね南相馬)というグループがある。ここでは放射能の影響ですぐには食用の作物を作れないが、発電を行うことで、収入を得ながら土の除染や農地としての確保をめざしている。
いずれにしても、「まずは売電収入ありき」という発想ではなく、農業や農地を活性化するために、どのようにエネルギーを活かせるのかという視点が重要になってくるのだろう。
えこえね南相馬の理事長・高橋荘平さん。プロジェクトを立ち上げた父親で医師の亨平さんが2013年に亡くなってから後を継いで活動をしている。
えこえね南相馬の専務理事・箱崎亮三さん。震災前は林業を経営していた。
ソーラーシェアリングを実施している所から数キロ離れた同市内の小高地区では、放射能の線量が高く、2015年現在も人が入れないままだ。
文/高橋真樹
※『SOLAR JOURNAL』vol.13 より転載