2050年は江戸時代?未来に生きるための農業の在り方。
2016/11/07
2012年にリオデジャネイロでおこなわれた国連・地球サミット(RIO+20)では「グリーン経済」への転換のために、生態系の保護と保全をする農業の在り方が問われた。農業の在り方が「生態系の保護」「グリーン経済への移行」そして「社会的格差の是正」に無関係ではないと考えられたからだ。
かつてマヤ文明は農業によって土地を疲弊させ亡んでいった。古代ギリシアは土壌浸食で衰退したといわれる。農薬による「緑の革命」はアジアの多くの地域の土壌を劣化させ、貧困層を生み出したと言われる。
人類は農業によって人口を増やしたが、農業による環境破壊で滅んだ文明もまた数多く存在するのだ。リオではアグロエコロジーをすすめるグループに、フェミニズム運動や人権団体、平和団体も関わっていた。
実に多様な価値観が、アグロエコロジーの潮流を形作っているのが面白い。人類は今世紀中には100億に達するといわれる。生態系を守り環境を保全しながら、いかに「食」と「エネルギー」を確保し、「貧富の差」や「人権」の課題を克服し、そのためにどんな社会にするかが問われている。
その根幹をなす「農業」のかたちを模索しているのがアグロエコロジーなのだ。
さて未来の予測はどうなっているか。
パーマカルチャーの創始者デビッド・ホルムグレンが「未来のシナリオ」のなかで4つの未来の可能性を図化している。未来を左右する要因として「気候変動」と「ピークオイル」があり、このふたつの要因によって未来のシナリオは4種にわかれるというものだ。
現在「気候変動」は最悪のシナリオへと進んでいて、その一方で非在来型の海底油田などの開発がすすみ推定埋蔵量は3兆バレルくらいに上方修正された。ホルムグレンのシナリオによると現在の工業化社会は維持され、「ブラウンテック」のシナリオにつきすすんでいるように見える。
このシナリオでは「飢餓」や「貧困」による社会不安や国家間の「資源」の確保のために、各国が「国家主義的な政権」へと移行するとされるが、まさに現在はそのように進んでいるように感じられる。
テロが頻発し、警察権力も強化される。加えて化石燃料の減少は比較的ゆるやかと考えられているが、やがてはシェールオイルのピークがやってくる。
2050年に江戸時代に回帰するとして、アグロエコロジーと資源リサイクル社会がそのベースになるかもしれない。パーマカルチャーのような有機農法と自然エネルギー、地上資源のリサイクル、さらには石川英輔さんの書籍の頃にはまだ存在していないネット技術やシェアの考え方が存在している。化学肥料のかわりにR水素の副産物としてアンモニアが農業にひろくつかわれるようになるかもしれない。
また在来種の保存の動きなど伝統的な暮らしや農法を守りながら、里山資本主義的なエネルギー循環を果たしているかもしれない。予測するよりサバイバルのスキルを身につけることが大切かもしれない。
そんなこともふくめて、やっぱりアグロエコロジーなのだ。
谷崎テトラ
Tetra Tanizaki
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。
環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。
世界のエコビレッジや聖地を旅し、収録した音源で音楽作品も数多く制作している。
谷崎テトラホームページ
※『SOLAR JOURNAL』vol.12より転載