清水国明 「わざわざ農業をするということ」
2015/06/28
体のスイッチをONにしてくれるのが自然
「プロの漁師さんに『食べられない魚は釣らない』という方がいました。僕は食べられなくても、釣ります。釣るのが楽しいから、喜びがあるからです。農業も同じ。食材はスーパーで買ったほうが安いに決まっています。大切なのは、プロセス。『わざわざ』ということです。私はアラスカに家族を連れてマイナス40℃の世界でキャンプをします。
『なぜ、わざわざ行くのか』と言われますが、そこに感動と楽しさがあるからです。こたつでみかんを食べるお正月には『楽』があります。しかし、『楽』と『楽しさ』は違います。楽しさを求めるには、『わざわざ』が必要です。結果が『やったー』でも『失敗した……』でも、喜怒哀楽があります。収穫物だけではなく、いかに『無駄』な1年を過ごしたかが、その1年の豊かさになります。農家がそれに応えるプログラムを提供できれば、産業の再興にもつながりますね」。
「ありが島」の命名に込めた思いとは?
〝アウトドア派〞の清水さんは都会人にこうアドバイスする。
「体のスイッチが入っていない人が多いです。ストレスは出番のない感覚や能力が『使ってくれ』とアピールしている状態。自然のなかで汚れたり、泥まみれになったりして人間になるんです。
島に来て1日でもいい、野生の生活を経験してほしいのです。すると、家に帰って感謝や感動の気持ちが湧いてきます。水が出る、電気を使える、暖かい……。今ある幸せに感謝する島だから、『ありが島』と名付けました。次は若者の出会いをつくる〝婚活〞の島をつくりたいですね。自然のなかで生活を共にすることでいい相手が見つかると思います。その島は『おめで島』と名付けようと考えています(笑)」。
清水国明
1950年福井県生まれ。’76年京都産業大学法学部卒。’73年に「あのねのね」で芸能界デビュー。’95年「自然暮らしの会」を立ち上げ。2004年「NPO法人 河口湖自然楽校」、’05年「森と湖の楽園」を開設。’12年山梨学院大学現代ビジネス学科客員教授、’14年埼玉県所沢市教育委員。山梨県富士河口湖町の特別町民。
写真/須田卓馬
取材・文/西条 秦
※「SOLAR JOURNAL」Vol.12 より転載